まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 先に行くほどトンネルは細くなり、腰を屈めるようにして進むこと二十分ほどで行き止まりにぶつかった。

 上に竪穴が伸びてはしごもあり、ここが出口のようだ。

 鉄の扉ではなく木製の一枚板が蓋のようにはめられていて、わずかな隙間から地上の光が漏れている。

 先頭の兵士がはしごに手をかけるのを見てクララが止めた。

「外の人を驚かせてしまうと思うので、私を先に上らせてください」

 身軽にはしごを上るクララにアドルディオンが声をかける。

「どこに繋がっているんだ?」

「たぶん教会よ」

 村にひとつしかない小さな教会は村人の憩いの場である。

 日曜の朝に礼拝が行われ、子供たちはパンや素朴な焼き菓子をもらえた。

 収穫祭やノエルは教会を飾りつけ、子供劇を練習して楽しかった思い出がある。

 七十歳近い神父はいつも穏やかで優しく、皆に慕われていた。

『たぶん』と言ったのは、教会に抜け道の扉があると誰かから教わったわけではないからだ。

 礼拝堂の祭壇の一角にそこだけ木目が違う正方形の板がはめ込まれていたのを思い出し、脳裏に幼い日の神父との会話が蘇った。

『神父様、あそこだけ板が違うのはどうして? ぴょんぴょんしたら音が響くの。下にはなにがあるの?』