まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

(もうバレていると思うけど、出自を偽っていたのに堂々としていてはいけないわよね。少しは隠そうとした方がよかったかも……)

「色々と驚かせてすみません」

 真後ろを進む国軍大将の顔色を窺えば、やや強面の目が細められた。

「妃殿下がお謝りになる必要はなにひとつございません。敵兵に囲まれながらも聡明で勇敢なご提案をくださいました。それを殿下がご英断くださいまして、我らはひとりも欠けることなくここにおります。我ら国軍兵士は王太子殿下ご夫妻に今後も変わらぬ忠誠を誓います」

 他の兵士も頷いており、官人からも声があがる。

「私どもも同意見でございます。村人と心を通わせる妃殿下を非難する者は隊の中におりません。誰にでも分け隔てなくお優しいあなた様は、誰より素晴らしいお妃様にございます」

「皆さん、ありがとうございます……」

 涙が出そうなほど嬉しくて言葉に詰まり、お礼を言うのが精一杯だ。

 夫に肩を抱かれてその顔を見ると、暗がりの中でも微笑んでいるのがわかった。

「胸を張れ。君は俺の誇れる妃だ」

 ずっと引きずっていた本物の貴族令嬢ではないという後ろめたさがスッと消え、心が急に軽くなる。

(村娘が王太子妃になってもいいんだわ)

 アドルディオンに言われた通りに胸を張り、「はい」と笑顔で頷いた。