まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 他の者たちは意味がわからないと言いたげな表情で傍観している。

「ほれ、若いの、お前さんたちも手伝わんか。逃げたいんじゃろ?」

 ハッとしたように護衛兵たちが慌てて薪を運ぶと、地面に現れたのは四角い鉄の扉だ。

 設置されたのはかなり古いと見られ、元の色がわからないほど錆びている。

 ゼフリーに指示されて護衛兵が重たい扉を開けたら、中はトンネルが掘られていた。

「数百年前はこの辺りの国境線があいまいで、辺境伯領は領地をめぐる争いにたびたび巻き込まれていたんじゃ。これは昔の村人が戦闘から逃れるために造った抜け道。村の中心部からここまで伸びている。森には悪魔が住んでいるから入ってはいかんという言い伝えもな、戦から逃れて森に隠れた村人を守るために作られた話なんじゃ」

(そうだったの)

 子供の頃から炭焼きを手伝っていたクララは抜け道の存在を聞かされたことがあって、それを思い出したからゼフリーを頼った。

 けれども悪魔が住むという言い伝えが生まれた理由は誤解していた。

 幼い頃は本気で悪魔の存在を信じ、成長してからは子供や旅人が深い森で迷わないよう案内なくして入るなという意味かと思っていたのだ。

「一本道じゃから迷うことはない。突き当りの扉を押し開けなさい」

 ゼフリーがオイルランプをひとつ持たせてくれて、護衛兵三人が確認のために先にはしごを下りた。