まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「その反応は当たりか。声に聞き覚えがあると言ったのは嘘だ。俺を暗殺してもその後、辺境伯は潰され独立は叶わない。それがわからないほど愚かではないだろう。とすれば強力な味方がいるはず。財も他貴族を従わせる権力もある者だ。なおかつ俺に恨みがあり、辺境伯をそそのかすことができ、あわよくば政権を転覆させて自分が操りやすい者を国王に据えようと考える有力者が。ハイゼンしかいない」

 クララはつい先ほどアドルディオンから説明されたことを思い出していた。

 辺境伯だけで独立戦争を仕掛けるのは無謀なので、この視察では危険がないと判断したという話だった。

『読み違えた』と言ったのは、ハイゼン公爵と結託していたことだろう。

 真夏に王太子から謹慎を言い渡された公爵は、まだ政界に復帰していない。許されるまで領地で大人しくしているのではなく、恨みを晴らすべく画策していたようだ。

『後悔なさいませんように』

 応接室を出ていく際の公爵の不気味な笑みを思い出し、今さらながら青ざめた。

 ハイゼン公爵が黒幕だと暴いても、アドルディオンの冷静な口調と表情は変わらない。

「その仮面の意味は公爵家の傭兵だと悟られないためか? 悪いが傭兵ひとりひとりの顔まで覚えていない。余計な仮面をつけさせたせいで俺に考えを読まれるとは、ハイゼンは愚かだ」