まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 一旦独立を承認させても、王太子の身柄を返せばすぐに攻め入られる。解放しなければ、それを理由にやはり国軍に囲まれる。

 今は国内の大多数の貴族が王家を支持しているので、戦争になれば確実に辺境伯は孤立し、敗戦の結果領地も命も失うことになる。

 王家に対抗できるほど強力な味方がいるなら別だが、現段階で辺境伯領が一国として独立するのは不可能なのだ。

「だからこの視察は危険がないと判断し、君を連れてきた。読み違えたというのは――」

 悪魔が住むと言われている森の入口が目前に迫っていた。

 森の手前に伸びる道を左へ向かえば、隣の村から領主の住まう大きな町へ続いている。

 右に一時間ほど進めば他領地に入る。

 一行が右へと馬を走らせようとしたら、前方から騎兵集団が現れた。

 その数、百騎ほどの軍勢で、剣や手斧を構えているので敵であるのは一目瞭然だった。

 木々に挟まれ馬が二頭並べるほどの細道でなければ、たちまち囲まれていたことだろう。

 行く手を塞がれては馬を止めざるを得ず、五メートルほどの距離を置いて軍勢と向かい合う。

(戦いになってしまうの?)

 王太子妃夫妻が騎乗する馬は隊の真ん中にいる。

 護衛兵が盾となってくれていても、圧倒的な数の違いにクララは恐怖した。

 敵将とみられる先頭にいる男はひと際体格がよく、仮面で目元を隠している。

「何者だ」