まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 なにぶん大家族なので大騒ぎになり、何事かと他の村人たちも集まった。

 皆が盛大に驚いていたけれど、クララの成功と母の順調な回復を自分事のように喜んでくれて心が温まる。

 なにより誰もかしこまらず、村で暮らしていた時と同じように接してくれるのが嬉しかった。

 楽しくて三十分ほども話してしまったが、その間、アドルディオンは目を細めてクララを見守ってくれていた。

 名残惜しい気持ちを抑え、集まった村人に別れを告げて夫の元へ戻る。

「殿下、お気を使っていただきまして誠にありがとうございました」

 従者にも聞こえてしまうので口調は硬いが、笑顔から感謝と喜びは伝わったようだ。

 彼も満足げに微笑んでくれた。

 再び馬に乗って漁港へ向かう。

 このまま畑の間の道をまっすぐ進み緩やかな坂を下った方が近いのに、一行は森側へと進路を取り、畑を迂回して港へ出る道に入ろうとしていた。

「アド、この道だとかなり遠回りになるわ」

 声を落として指摘すると、わかっているというように夫が頷いた。

「予測されづらい道を選んでいる」

「えっ?」

 誰が予測するというのだろう。心の中で疑問を投げかけ、すぐに辺境伯だと気づいた。

 ということは今朝の突然の予定変更も、サンターニュ村への訪問を事前に知らせなかったのも、行動を読ませないためではないだろうか。