まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「世話になったお礼として俺がクララにあげたものだ。両袖分を渡したらひとつを返された。また会えるようにひとつずつ持っていようと言われたんだ。王城の私室のキャビネットにある。比べれば同じものだとわかるだろう」

「それじゃ、やっぱり私が――」

 喜びかけたが、険しい顔をしている彼の眉間にさらに力が込められるのを見た。

 期待が膨れ上がるのをこらえているような表情だ。

「ぬか喜びはしたくないんだ。慎重になるのを許してくれ。別の少女が落としたカフスボタンを、君が拾ったという可能性もある」

「そ、そうですよね」

 少年からもらった記憶はなく、自分がその少女だと自信を持って言えないのが口惜しい。

(ここにお母さんがいてくれたら)

 母はまだアドルディオンに会ったことがない。

 クララの出自が完全に公にされた時に見舞いに行くと夫が言ってくれたので、会うのは当分先だと思われる。

 しかし母に九年前について尋ねたら、銀色の髪の少年がうちで傷を癒していたのかどうかはわかるはずだ。

 今すぐ知りたいのに、王都に帰るまで叶わない。

「他に証拠は……ないわよね」

 ため息交じりに呟くと、アドルディオンがクララの太ももを指さした。

「証拠はそこにある。少女の右足に花形の痣があったのを覚えている」

 ひと月ほど前、夫婦の寝室で突然押し倒されたのは、それを確認するためだったそうだ。