ベッドの空いているスペースに寝間着姿のアドルディオンが座り、片手を握ってくれている。心配そうに眉根を寄せ、顔を覗き込んできた。
「随分とうなされていたぞ。悪夢を見たのか?」
「は、はい。すごく怖かったんです」
内容を伝えようとしたが夢の記憶はすでに霧散しており、言葉で説明できるほど覚えていなかった。
「忘れてしまいました」
苦笑すればアドルディオンがフッと表情を和らげて手を離し、ベッドサイドのテーブルに置かれたランプの火を少し強めた。
明るくなった室内で、もぞもぞと身を起こしてからやっと気づく。
「もしかして、殿下のお部屋もこちらですか?」
宿屋では別室だったので、ここでもそうだと思い込んでいた。
「ああ」
サラリとした返事に頬が染まり、たちまち鼓動が加速した。
(どうしよう。心の準備ができていない)
視察の出発前夜まで夫の忙しさは続いていたので、寝室を別にしていた。
同じ部屋で寝るのはひと月ぶりくらいだろう。
(大きなベッドに、枕がふたつ。もっと早く気づくべきだった)
アドルディオンの眉間に皺が寄ったのを見て、勘違いされる前に慌てて弁明する。
「久しぶりなので緊張しているだけです。一緒に寝られるのが嬉しくて――あ、あの、変な期待はしていませんのでご安心ください」
(私はなにを言っているのよ!)
「随分とうなされていたぞ。悪夢を見たのか?」
「は、はい。すごく怖かったんです」
内容を伝えようとしたが夢の記憶はすでに霧散しており、言葉で説明できるほど覚えていなかった。
「忘れてしまいました」
苦笑すればアドルディオンがフッと表情を和らげて手を離し、ベッドサイドのテーブルに置かれたランプの火を少し強めた。
明るくなった室内で、もぞもぞと身を起こしてからやっと気づく。
「もしかして、殿下のお部屋もこちらですか?」
宿屋では別室だったので、ここでもそうだと思い込んでいた。
「ああ」
サラリとした返事に頬が染まり、たちまち鼓動が加速した。
(どうしよう。心の準備ができていない)
視察の出発前夜まで夫の忙しさは続いていたので、寝室を別にしていた。
同じ部屋で寝るのはひと月ぶりくらいだろう。
(大きなベッドに、枕がふたつ。もっと早く気づくべきだった)
アドルディオンの眉間に皺が寄ったのを見て、勘違いされる前に慌てて弁明する。
「久しぶりなので緊張しているだけです。一緒に寝られるのが嬉しくて――あ、あの、変な期待はしていませんのでご安心ください」
(私はなにを言っているのよ!)



