もう少しなにか言葉がもらえると思っていたのに、あまりにも興味が薄そうな返事をされて勇気がしぼんでしまった。
彼から拒絶されたように感じ、胸が痛む。
(お会いできたから、今日はそれだけで十分よ)
「はい……」
頭を下げると、アドルディオンが横を通り過ぎようとする。この先には彼の執務室があるので、一旦戻るのだろう。
一歩二歩と夫が足を踏み出すごとに、心の中で自分を叱る声が大きくなる。
(なにやっているの。言いたいことはそれじゃないでしょ。早く呼び止めないと!)
「殿下!」
グッと両手を握りしめ、走ってアドルディオンの前に回り込んだ。
「違うんです。そんな相談をしたかったわけじゃないんです。拒むつもりはなかったと言いたくて。突然のことに驚いただけなんです。少しも嫌じゃなかったのに私……この前の夜を後悔しています。お許しくださ――」
無我夢中で気持ちを伝えていると、大きな手で口を塞がれた。肩を抱かれるような格好で、耳に彼の唇があたる。
心臓が胸から飛び出しそうな思いでいると、注意を囁かれた。
「必死なのはよく伝わったが、ここは議場前の廊下だ。閨の事情を声高に言わないでくれ」
誤解を解こうと焦るあまり、周囲が見えていなかった。
恐る恐る横目であたりを窺うと、議員資格のある貴族たちが遠巻きにこちらを見ていた。
彼から拒絶されたように感じ、胸が痛む。
(お会いできたから、今日はそれだけで十分よ)
「はい……」
頭を下げると、アドルディオンが横を通り過ぎようとする。この先には彼の執務室があるので、一旦戻るのだろう。
一歩二歩と夫が足を踏み出すごとに、心の中で自分を叱る声が大きくなる。
(なにやっているの。言いたいことはそれじゃないでしょ。早く呼び止めないと!)
「殿下!」
グッと両手を握りしめ、走ってアドルディオンの前に回り込んだ。
「違うんです。そんな相談をしたかったわけじゃないんです。拒むつもりはなかったと言いたくて。突然のことに驚いただけなんです。少しも嫌じゃなかったのに私……この前の夜を後悔しています。お許しくださ――」
無我夢中で気持ちを伝えていると、大きな手で口を塞がれた。肩を抱かれるような格好で、耳に彼の唇があたる。
心臓が胸から飛び出しそうな思いでいると、注意を囁かれた。
「必死なのはよく伝わったが、ここは議場前の廊下だ。閨の事情を声高に言わないでくれ」
誤解を解こうと焦るあまり、周囲が見えていなかった。
恐る恐る横目であたりを窺うと、議員資格のある貴族たちが遠巻きにこちらを見ていた。



