粉ひき小屋の水車の歯車に引っかかっていたのを村人に発見され、海まで流されなかったので助かったそうだが、気を失っていたのでまったく覚えていない。
記憶にあるのは助けられた翌日、自宅で目覚めてからのことだ。
擦り傷を全身に作っていたが骨折はなく、すぐに元通りの生活に戻れて母がホッとしていた。
記憶がないとわかって村医者の診察を受けると、大丈夫だと言われた。
そして元気になってから何日かして、母にカフスボタンを見せられた。
『川から助け出された時に、クララのポケットに入っていたのよ。これをどうしたの?』
その記憶もまったくなく、どうやって手に入れたのかと思うと怖くなった。もしかして自分が盗んだのではないかと疑ったのだ。
それを母は否定し、いくら記憶になくてもクララは絶対に人の物を盗んだりしないと断言してくれた。
『ブローチ? どうやってつけるの?』
『カフスといって袖口につけるボタンよ。男性が使うの。クララは川に落ちる前、困っている旅人に出会って助けてあげたのよ。これはきっとそのお礼』
貧しい村なので、村長だってこんなに立派なカフスボタンをつけていない。だから旅人からもらったというのが母の推測だ。
(そうなの?)
真っ白な記憶の中を探ろうとしたら、頭が痛み顔をしかめた。
すると母に強く注意された。
記憶にあるのは助けられた翌日、自宅で目覚めてからのことだ。
擦り傷を全身に作っていたが骨折はなく、すぐに元通りの生活に戻れて母がホッとしていた。
記憶がないとわかって村医者の診察を受けると、大丈夫だと言われた。
そして元気になってから何日かして、母にカフスボタンを見せられた。
『川から助け出された時に、クララのポケットに入っていたのよ。これをどうしたの?』
その記憶もまったくなく、どうやって手に入れたのかと思うと怖くなった。もしかして自分が盗んだのではないかと疑ったのだ。
それを母は否定し、いくら記憶になくてもクララは絶対に人の物を盗んだりしないと断言してくれた。
『ブローチ? どうやってつけるの?』
『カフスといって袖口につけるボタンよ。男性が使うの。クララは川に落ちる前、困っている旅人に出会って助けてあげたのよ。これはきっとそのお礼』
貧しい村なので、村長だってこんなに立派なカフスボタンをつけていない。だから旅人からもらったというのが母の推測だ。
(そうなの?)
真っ白な記憶の中を探ろうとしたら、頭が痛み顔をしかめた。
すると母に強く注意された。



