すっかり諦めていた中で、わずかな期待の火が灯る。
(私に対しての優しさを残してくださっているのなら……)
一方、ハイゼン公爵は厳しい注意を不服とばかりに反論する。
「閨をともにすれば情が移るものだと思いますが、よくお考えくだされ。クラム伯爵とこの娘は、殿下をたばかっていたのですぞ? 情けをかける価値もありません。厳罰に処すべき犯罪者ですから」
クラム伯爵が「ひっ」と掠れた悲鳴をあげた。断頭台でも想像したのか、ソファに身を縮こまらせて震えている。
パトリシアは父とは違い、先ほど感じた期待を胸に膨らませていた。
絨毯に膝を落として両手をつくと、アドルディオンを見ながら声に力を込めた。
「殿下にお願い申し上げます。どんな罰でもお受けしますので、どうか私ひとりの処分でお許しください」
娘を出世の道具として扱った父を守りたいと思えるほど、お人好しではない。
しかし父が爵位をはく奪されずにすんだなら、母の入院費を今後も出してもらえるかもしれない。
しでかした罪に対して欲張りなお願いだと思うが、港で靴を投げた少年を許した彼ならこの気持ちをわかってくれると信じて必死に頭を下げた。
「見苦しいぞ。罪を認めたなら大人しく沙汰を待て」
ハイゼン公爵は鼻で笑い、伯爵家の取り潰しは免れないと確信しているようだ。
(私に対しての優しさを残してくださっているのなら……)
一方、ハイゼン公爵は厳しい注意を不服とばかりに反論する。
「閨をともにすれば情が移るものだと思いますが、よくお考えくだされ。クラム伯爵とこの娘は、殿下をたばかっていたのですぞ? 情けをかける価値もありません。厳罰に処すべき犯罪者ですから」
クラム伯爵が「ひっ」と掠れた悲鳴をあげた。断頭台でも想像したのか、ソファに身を縮こまらせて震えている。
パトリシアは父とは違い、先ほど感じた期待を胸に膨らませていた。
絨毯に膝を落として両手をつくと、アドルディオンを見ながら声に力を込めた。
「殿下にお願い申し上げます。どんな罰でもお受けしますので、どうか私ひとりの処分でお許しください」
娘を出世の道具として扱った父を守りたいと思えるほど、お人好しではない。
しかし父が爵位をはく奪されずにすんだなら、母の入院費を今後も出してもらえるかもしれない。
しでかした罪に対して欲張りなお願いだと思うが、港で靴を投げた少年を許した彼ならこの気持ちをわかってくれると信じて必死に頭を下げた。
「見苦しいぞ。罪を認めたなら大人しく沙汰を待て」
ハイゼン公爵は鼻で笑い、伯爵家の取り潰しは免れないと確信しているようだ。



