立身出世という目的を達成したら娘に興味がなくなったのか、王城に会いにきたことはなく帰省の求めもない。
深緑と茶色を基調とした部屋で、窓を背にしたふたり掛けソファにアドルディオンが座り、四角いテーブルの角を挟んだ隣にはハイゼン公爵父娘が、その向かいのひとり掛けに父が腰かけている。
エロイーズは上品に微笑んで、公爵は愉快そうな面持ちだ。
父は伯爵家での偉そうな態度と違い、顔色を悪くしてオドオドしていた。
アドルディオンは訝しげな目を公爵に向けていたが、入室した妻に視線を移す。
他の三人の視線も集まり、パトリシアは心臓を大きく波打たせた。
ハイゼン公爵は娘が謁見すると聞いて同行しただけかもしれないが、父や夫までいる意味がわからない。
しかし公爵が厚めの唇をニタリとつり上げたのを見て、嫌な予感が走った。
(まさか……)
「殿下、大変お待たせいたしました。主役が登場なさいましたので、ご説明いたしましょう」
今は謁見予定の十四時ちょうどである。
しかし公爵の言葉から、アドルディオンがもっと前に呼び出されていたのがわかった。
まるで着席する資格もないとばかりに、パトリシアをドア前に立たせたままで公爵が話を進める。
「二か月ほど前に、私の母が入院しております病院に娘が見舞いに行きまして――」
深緑と茶色を基調とした部屋で、窓を背にしたふたり掛けソファにアドルディオンが座り、四角いテーブルの角を挟んだ隣にはハイゼン公爵父娘が、その向かいのひとり掛けに父が腰かけている。
エロイーズは上品に微笑んで、公爵は愉快そうな面持ちだ。
父は伯爵家での偉そうな態度と違い、顔色を悪くしてオドオドしていた。
アドルディオンは訝しげな目を公爵に向けていたが、入室した妻に視線を移す。
他の三人の視線も集まり、パトリシアは心臓を大きく波打たせた。
ハイゼン公爵は娘が謁見すると聞いて同行しただけかもしれないが、父や夫までいる意味がわからない。
しかし公爵が厚めの唇をニタリとつり上げたのを見て、嫌な予感が走った。
(まさか……)
「殿下、大変お待たせいたしました。主役が登場なさいましたので、ご説明いたしましょう」
今は謁見予定の十四時ちょうどである。
しかし公爵の言葉から、アドルディオンがもっと前に呼び出されていたのがわかった。
まるで着席する資格もないとばかりに、パトリシアをドア前に立たせたままで公爵が話を進める。
「二か月ほど前に、私の母が入院しております病院に娘が見舞いに行きまして――」



