まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 そのように思われている気がして恥ずかしくなり、「呼ぶまで下がっていろ」と退けた。


* * *


 外はしとしとと雨が降っている。

 今日のパトリシアは、とある伯爵家でのガーデンパーティーに呼ばれていたのだが、悪天候で中止となったため午後のスケジュールが空いた。

 昼食後は久しぶりに私室でエイミとゆっくり過ごしている。

 ライムグリーンと白を基調とした私室は、ここに来た最初から女性らしいインテリアが揃えられていた。

 小鳥が刺繍されたソファに座るパトリシアは、読んでいた本にしおりを挟むと窓を見た。

 庭木の梢が雨に打たれて揺れている。

(緑にとっても私にとっても恵みの雨ね)

 王家を支持してもらうためには他貴族との交流は欠かせない。

 それを理解しているので、なるべく催しの招待を受けようと思うのだが、淑女を演じるのは楽ではない。

(強い降りではないしお母さんのお見舞いに行きたいけど、どうしよう。夕方にした方がいいかな)

 外出の予定をすぐに決められないのは、アドルディオンが離宮に来るかもしれないと思うからだ。

(私がいないと殿下が離宮で休憩できないから……あれ? そんなことはないかも)

 招き入れた夫を応接室に通し、飲んでくれないお茶を形ばかりに出して、後はジルフォードを呼べばいい。