「マドレーヌは苦手でいらっしゃいますか?」
「いや、そうではない」
それならなぜ手をつけないのかと考え、ハッとした。
「大変申し訳ございません。差し入れの残りだなんて、殿下に失礼でした」
食べてみたいと言われた気がしてすっかり舞い上がっていたが、よく考えれば国王に次ぐ権力者に対して無礼である。
家に訪ねてきた村人に『残り物でよかったら』と、料理を出して喜んでもらっていた村娘時代とは違うのだ。
「こちらは下げますので、他のものを召し上がってください。本当に申し訳ございません」
「違うんだ。差し入れの残りだからと迷っていたわけではない。君の手作りの菓子は食べてみたいと思っている。嘘ではない」
焦りを目元に表したアドルディオンがマドレーヌを手に取った時、ノックの音がした。
パトリシアが返事をすると入ってきたのは近侍のジルフォードだった。
「王太子妃殿下、失礼いたします。殿下に急ぎのご連絡がありまして参りました。少々お時間をいただきます」
これまでにも近侍が同じ用件で離宮を訪れたことがあり、報告を聞いたアドルディオンはすぐに休憩を切り上げた。
(今日もこれでお戻りになるのかしら。忙しいなら仕方ないわ。でも少し、寂しい気がする)
まだ食べてもらっていないからそう思うのだろうか。自分でもよくわからないが、話し足りない気持ちで眉尻を下げた。
「いや、そうではない」
それならなぜ手をつけないのかと考え、ハッとした。
「大変申し訳ございません。差し入れの残りだなんて、殿下に失礼でした」
食べてみたいと言われた気がしてすっかり舞い上がっていたが、よく考えれば国王に次ぐ権力者に対して無礼である。
家に訪ねてきた村人に『残り物でよかったら』と、料理を出して喜んでもらっていた村娘時代とは違うのだ。
「こちらは下げますので、他のものを召し上がってください。本当に申し訳ございません」
「違うんだ。差し入れの残りだからと迷っていたわけではない。君の手作りの菓子は食べてみたいと思っている。嘘ではない」
焦りを目元に表したアドルディオンがマドレーヌを手に取った時、ノックの音がした。
パトリシアが返事をすると入ってきたのは近侍のジルフォードだった。
「王太子妃殿下、失礼いたします。殿下に急ぎのご連絡がありまして参りました。少々お時間をいただきます」
これまでにも近侍が同じ用件で離宮を訪れたことがあり、報告を聞いたアドルディオンはすぐに休憩を切り上げた。
(今日もこれでお戻りになるのかしら。忙しいなら仕方ないわ。でも少し、寂しい気がする)
まだ食べてもらっていないからそう思うのだろうか。自分でもよくわからないが、話し足りない気持ちで眉尻を下げた。



