舞踏会では直接言葉を交わさなかったし、夜会用のドレス姿とメイド服では見た目の印象が異なるはずだ。
だから気づかれていないと都合のいい結論を出し、やっと焦りを解いて歩調を緩めた。
(そういえば、お母さんの向かいの病室の新しい入院患者さんは高貴な家柄だと言っていた。もしかしてエロイーズさんのおばあさま?)
変装しているからといって今後のお見舞いは気を抜けない。
鉢合わせないよう細心の注意を払わねばと嘆息し、乗合馬車の停留所を目指して歩いた。
王太子に嫁いで二か月ほどが経つ。
そろそろ妃の立場に慣れただろうとみなされ、最近では公務が増えた。
四日前には結婚式を挙げた教会の催しに出席し、昨日は民間の有力者の妻や娘が集う婦人会なるものに顔を出した。
ボロを出さないよう神経をすり減らして、離宮に戻った時には疲れ果ててソファに倒れ込む。
それでも公務を減らしてほしいとは言わない。王太子妃になったからには精一杯、務めようと心に決めていた。
そして今日は公務がないけれど、謁見希望の貴族が三組もいて忙しい。
王妹である叔母が訪ねてくれたなら断れるのだが、エイミが探りにいった結果、今日は国王のお見舞いに来ていないらしい。
時刻は十六時半。三組目の謁見者はとある伯爵家の母娘で、今から帰るところだ。
応接室から出た廊下で母娘が揃って頭を下げる。
だから気づかれていないと都合のいい結論を出し、やっと焦りを解いて歩調を緩めた。
(そういえば、お母さんの向かいの病室の新しい入院患者さんは高貴な家柄だと言っていた。もしかしてエロイーズさんのおばあさま?)
変装しているからといって今後のお見舞いは気を抜けない。
鉢合わせないよう細心の注意を払わねばと嘆息し、乗合馬車の停留所を目指して歩いた。
王太子に嫁いで二か月ほどが経つ。
そろそろ妃の立場に慣れただろうとみなされ、最近では公務が増えた。
四日前には結婚式を挙げた教会の催しに出席し、昨日は民間の有力者の妻や娘が集う婦人会なるものに顔を出した。
ボロを出さないよう神経をすり減らして、離宮に戻った時には疲れ果ててソファに倒れ込む。
それでも公務を減らしてほしいとは言わない。王太子妃になったからには精一杯、務めようと心に決めていた。
そして今日は公務がないけれど、謁見希望の貴族が三組もいて忙しい。
王妹である叔母が訪ねてくれたなら断れるのだが、エイミが探りにいった結果、今日は国王のお見舞いに来ていないらしい。
時刻は十六時半。三組目の謁見者はとある伯爵家の母娘で、今から帰るところだ。
応接室から出た廊下で母娘が揃って頭を下げる。



