まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!


「もう少し食べて。まだ半分以上、残っているわ」

「お昼は頑張って食べたから許して。それよりあなたの話が聞きたいわ。つらい目に遭っていない? 無理していない……わけないわよね。お母さんのせいだわ。ごめんなさい」

 母はことあるごとに病気になった自分を責め、娘に詫びる。

 クラム伯爵邸で暮らしていた時もそうだったし、王太子妃になってからもだ。

 ただの村娘だった我が子のシンデレラストーリーを喜ばず、貴族として生きなければならない苦労に涙してくれる。夫から愛されているのならまだしも名ばかりの妻であり、大切にされないのではないかと、それについても心配しているようだ。

 不安にさせないよう母の前では楽しい話しかしてこなかったのに、なぜかいつも気持ちを読まれてしまう。

 眉尻を下げている母に、パトリシアは笑みを向ける。

「私は大丈夫よ。離宮暮らしにも慣れたし、エイミもそばにいてくれる。王城はいろんな人がいて毎日刺激的よ。今日も叔母様がいらして、流行りの本をいただいたの。そうそう、アカゲラの話もしないと」

 今日あったことを面白おかしく母に教える。