知らない人に恋の話をするなんて、少し躊躇ってしまう。でも口からは友達には言えないドス黒い想いが溢れてきてしまった。

「もう、消えちゃいたいんです」

さっきまで感じていた悲しみが再び押し寄せる。止まっていたはずの涙が、また溢れてしまった。フィリップさんにヘンリーとジョディのことを話す。

「そうですか。そんなことが……」

「ずっとずっと好きだったんです。彼に振り向いてもらえるように頑張ってきたのに……」

フィリップさんが渡してくれたハンカチで涙を拭う。でも、溢れた涙が止まらなくて一瞬にしてハンカチをビショビショに濡らしてしまう。

「少しだけ付き合ってくれませんか？ヘザーの心の傷が癒えるかどうかはわかりませんが、失恋の痛みをほんの少しは忘れられるかもしれません。……もし付き合ってくれるのなら、目を閉じてくれませんか？」

何も考えていなかった。失恋の痛みを忘れたいとか、そんなことは一ミリも思っていなかった。ただ、この不思議な出会いをここで終わらせたくなかったのかもしれない。