異国の地で出会った財閥御曹司は再会後に溺愛で包囲する

「翠々、あなたの好きな人って鳴宮さんだったのね。早く言いなさいよ。そしたらお見合いを勧めたりしなかったわ」

 来客用の応接間に通された私たちがソファーに腰を下ろすと同時に、叔母が親しげな声音で私に話しかけてきた。
 いつものきつい口調とは正反対なので、私は驚いてポカンとしてしまう。
 そうは言うけれど、琉輝さんの存在を知ったらお見合いを勧めない代わりに鳴宮財閥に取り入ろうと必死になっていたはずだ。拝金主義の叔母の行動はある意味わかりやすい。

「琉輝さんのお父様は……?」

「父はスターレイルエアの社長をしております。ちなみに祖父が会長で」

「だったら、ゆくゆくはあなたがスターレイルエアを継ぐことに?」

「叔母さん!」

 叔母は肩をすくめていったん席を外し、高級な玉露を淹れて戻って来た。
 叔父も応接間へやってきて挨拶を交わしたのだけれど、それからはずっとふたりで琉輝さんを質問攻めにしていた。

「彼女が借りていた留学費用の件ですが、僕が支払います。翠々さん宛てに送られたメールの振込先でよろしいですよね」

 琉輝さんの言葉を聞いた叔母は満面の笑みを浮かべてうなずいた。貸していたお金が一括で戻ってくるからうれしいのだろう。
 だけどそんな話を聞いていなかった私は驚いて、思わず彼のスーツの袖をちょこんと引っ張った。

「とりあえず俺が返しておくよ」

「でも……」

「さすがですわね! でも、鳴宮財閥のご子息にとってはたいした金額ではありませんわよねぇ」

 私の小さな声は、叔母の失礼な発言によって見事にかき消された。
 結局琉輝さんに盛大に迷惑をかけてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。
 さらに彼は光永さんの会社との取引状況を何気なく叔父に尋ね、自分が出来ることは協力するからお見合いの件で私をこれ以上責めないでほしいと言ってくれた。