異国の地で出会った財閥御曹司は再会後に溺愛で包囲する

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「こちらの方はどなた? 弁護士さん?」

 翌月、琉輝さんとふたりで叔父と叔母に会いに行った。
 きちんとした用件がなければ会ってもらえないと思ったので、借金返済の件で話したいのだとメールで伝えておいたのだけれど、叔母は私が弁護士を伴ってやって来たと勘違いしたらしい。
 玄関先で腕組みをしながら憮然とした態度を取っている。このまま家に上げずに門前払いするつもりだろうか。

「違うの。弁護士さんじゃなくて」

「初めまして。鳴宮琉輝といいます」

 琉輝さんが名刺入れから名刺を一枚取り出し、美しい所作で叔母に手渡した。
 まるで値踏みするように視線を上下させていた叔母だったが、彼が身に着けている濃紺のスリーピーススーツが上等なブランド品であるとすぐに気づいたみたいだ。

「まぁ! スターレイルの社長さんでいらっしゃるの?」

 ツンとしたまま名刺に視線を落とした叔母が驚いて大きな声を上げた。

「はい。実務を担ってるほうの関連会社ですが」

「でも、鳴宮さんってお名前……もしかして創業一族の方?」

 琉輝さんが柔和な笑みをたたえてうなずくと、家柄や肩書が大好きな叔母は一瞬で表情が明るくなった。
 私は逆に、叔母のこういう浅ましい部分が恥ずかしくて仕方ない。

「翠々さんとは留学中に知り合って、つい最近なんですが正式に交際することになりましたので、一度ご挨拶しておきたくて参りました」

 彼が「お口に合うといいのですが」とスマートに焼き菓子の手土産を渡すと、叔母はうれしそうにそれを受け取った。

「むさ苦しい家ですけど中でお話しましょう。どうぞどうぞ」

 やっと玄関扉を開けてくれた叔母は、上品な奥様を気取って声を上ずらせている。
 こうなる予想はついていたので彼にも事前に伝えていたものの、隣にいる琉輝さんに「すみません」と小声で謝った。
 彼は大丈夫だと言わんばかりに私の背中をやさしく擦ってくれる。