「琉輝はさ、顔も頭もいいんだから普通にアピールすればいいんじゃないの? 二ヶ月なんてあっという間だ。グズグズしてたらずぐに日本に帰っちゃうぞ」

 軽い調子でサラリと返されたけれど、壮太が言うことも一理ある。
 一目惚れに近い形で翠々に惹かれているが、澄ました顔でなにもアピールしなければ、留学を終えた彼女は日本に帰ってそれで終わりだ。

「彼氏……いるのかな?」

 ポツリとこぼした俺の本音を拾い、壮太が意味深にニヤリと笑った。

「いるかもな。翠々ちゃんかわいいからモテそう」

「おい」

「鳴宮財閥の跡取りがなにを気にしてるんだよ」

 わざわざ告げるつもりはなかったけれど、知り合った当初に親の会社が航空関連だと話したら、壮太は名字から俺が鳴宮財閥だと言い当てた。頭がいい分、勘もするどい。

「わかってると思うけどバラすなよ」

「相変わらずだな。由緒正しい名家を武器にしないなんて俺には考えられない」

 誰かと仲良くなるために鳴宮の名前を利用したくはない。
 家柄なんか関係なく、ひとりの男として見てくれるかどうかが俺にとっては重要だ。
 財閥だと知った途端に目の色が変わるなら、それこそ俺を見ていないという証拠で至極残念な気持ちになる。

 翠々とは仲良くなりたい。だけどそれは俺らしく、俺のやり方でいく。
 ブレない考えのまま、俺は交流会主催のバーベキューに参加した。