十六歳だったさぎりは、一人、希海の近くに侍っていた。
いつでも可愛い主人のため、笑顔を絶やさず、その世話をする。
そんなさぎりを、萩恒家の当主である崇史は、最初からずっと心配していた。
「さぎり。まだ決心はつかないか」
「まだというより、ずっとつきませんよ」
「さぎり!」
「私が希海様から離れたら、お困りでしょう?」
柔らかく透けるような茶色の髪、緋色の瞳をした見目麗しい十八歳の主人は、苦しそうにその顔を歪め、さぎりを見る。
この優しい主人は、さぎりに、ここから逃げろと言っているのだ。
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