「たかにぃ、ですか」
「うん! たかにぃ!」
「その方は、どちらに?」
「えっとね。一ヶ月だけ、南に行ってるの。妖怪退治なのよ」
「ほほー。えーと、うーん。えーと、それは大変なお仕事ですね……」
「うん!」
「それで、南というのは?」
「電車の通ってないとこ。南!」
「ほほほー、成程成程……」
飛脚の脳裏に浮かぶのは、先程別れたばかりの、馴染みの老婦人の言葉。
『黄金色の髪の女の子がね、たかにぃ宛てに手紙を送りたがると思うのよ。送付先を、それっぽく聞き取ってあげてちょうだい。手紙自体は、この封筒に同封すれば良いから』
(それっぽくってなんだ!? これをそれっぽく……?)

