崇史とさぎりの婚約については、希海もだが、何より御影が喜んでくれた。
「御影様。何故そのように、私にお優しくしてくださるのですか?」
一度、不思議に思って、さぎりは尋ねたことがある。
「元々ね、さぎりちゃん達を拾ったのは、『もしかして、噂のさぎりちゃん? 異能を持つ子狐ちゃん?』と思ってのことだったんだけど」
噂のさぎりちゃんという言葉に首を傾げると、崇史は顔を赤くして「御影様!」と静止する。
因みに、希海のことは、深夜、家の中でとたとた歩く座敷童のような女の子が現れたことで、なんとなく察したのだという。希海は夜に、たまに人の姿に戻って、御影の家を探検をしていたらしい。
御影はふふっと笑って崇史を見た。
「昔からね。皇族には、言い伝えがあってね」
「はい」
「萩恒の恋を邪魔してはならない」
目を丸くするさぎりと崇史に、御影はくすくす笑っている。
「萩恒の力は炎。燃えさかる炎のような想いが、彼らを強くするんですって。それにしても、まさかあんなふうに大きな狐に成るなんて、愛されてるわよねぇ」
ころころと笑う御影に、さぎりも崇史も顔を真っ赤にして俯くのだった。

