「でも、いつ…………あ」



一つだけ思い当たることがある。

それは放課後。路地裏で、



――え、きゃ……っ!



チクッと痛みがあって。

それから、



――痕が消える頃、また会いに来る。それまで、俺がこれを預かる



奏さんは、そう言った。

……え?

痕って……まさか!



「これって、奏さんのキスマーク……?」



ビタッと、鏡にへばりつきながら、穴があくほど肩を見る。

すると、肩の一部はピンクに色づき、そして……淡い恋の色ににじんでいた。



「奏さん、ズルい。こんなの……ズルすぎですよぅ」



たった今、あなたの事を諦めようとした私を引き止めるような。そんなキスマーク。


奏さんが私につけてくれたものだと思うと、あの時感じた痛みすら愛しく思えて……思わず、左手で肩を掴んだ。