ケンカっ早い不良たちが、総長である俺の静かさに拍子抜けし、不満に思った事は数えきれないほどあっただろう。それでも俺の傍を離れなかったのは……睦の努力の賜物だ。
睦の一挙手一投足、全て自分勝手なものかと思いきや、それらは全て【青翠】に向かっていた。
総長の俺を敬い、仲間の統率を図ってくれていた。
睦にとって【青翠】は、それほど大事なものだったんだ――
「お前の【青翠】を守れなくてごめんな。睦には、もっといい暴走族を見せてやりたかった」
「――っ!」
「殴りたければ殴れ。俺はもう、お前の上に立つ者でも何でもないんだから」
「……このッ、!」
その言葉を合図に、睦は足を使って素早く飛び起きた。と同時に、俺に向かって拳をふるう。
「この、クソ総長ーッ!!」
「……――」
見切れる。
避けられる。
あの拳から逃げるのは簡単だ。
だけど――
「……どうして、殴らないんだ」
「う、うぅ……っ」
動かない俺の眼前で、睦の拳が止まる。そのまま睦はグシャリと崩れ落ち、四つん這いで呟いた。



