「二手の別れて攻撃しようとしてたのか、相変わらず浅知恵だなぁ。それに、その陰気な顔を見るのも久しぶりだぜ」

「……もっと他に言う事あるでしょ。お前がいなくなってから、お前の弟がずっと探している」



蒼羽さんは、苦々しく口にした。

どうやら夕暮には弟がいるみたい。夜野さんは、その弟と仲良し……なのかな?

だけど夕暮は「は?」と。
顔を歪め、首をひねった。



「弟? 俺にそんな奴いたっけな? 弱くてどーでもいい奴のことなんか、すぐ忘れちまうからよ」

「――っ!」



瞬間、夜野さんは目を見開いて、夕暮に殴りかかろうとした。

だけど春風さんが口を開く。


「夜野」――と。


それはまるで「ストップ」の合図。夜野さんの動きが、糸で絡めとられたみたいに、ピタリと止まる。



「夜野の気持ちは分かる。が、その拳は納めとけ」

「……っ、ふー」



一度だけ深呼吸した夜野さんは、夕暮から一歩引く。