「ヤダ、やだよ……奏さん。
こっちに来て! 一緒に逃げようよ!」



「これが最後」みたいな……
そんな別れ方、イヤだよ。
一方的にサヨナラなんて、あんまりだよ。



「奏さん!」



絶対に振り向かない奏さんの背中を、私の声で動かして見せるんだ――そう思うのに、意気込みは空回り。

奏さんは、微動だにしなかった。

そんな奏さんの周りに、ナイフを持った人や鉄パイプを持った人が、グルリと取り囲む。



「ま、待ってよ。やめてよ、
そんなの、死んじゃうよ……!」



奏さんが死んじゃう。

いなくなっちゃう!

もう永遠に、会えなくなる……!



「やだよ、奏さん!
あなたがいないと、私は……っ」



やっと、奏さんの気持ちが分かったのに。

すれ違い続けた線が、やっと交わったのに。

幸せを掴んだ途端に、切れちゃうの?

それが私と奏さんの運命なの?



「……やだぁっ、」