「今日はお店の方が直々に、屋敷に着物を持って来られるそうです。お好きな柄があるといいですね」 「……うん」 俺は、見てしまった。 澪音が、困ったように笑顔を浮かべたのを。 全然、幸せじゃない顔をしているのを。 「あんな顔……反則でしょ」 ダッ 放っておけるわけない。 見て見ぬふりはできない。 俺の前で笑うこと以外なかった澪音が、あんな悲しそうにしているのを、黙って見過ごすわけにはいかない。 一心不乱に走って、澪音に手を伸ばす。 そして――