…ベリクリーデの様子がいつもと違っているように見えるし。

その上、見たことのない不思議な…抜刀術、だっけ?

味方のはずなのに、ベリクリーデが何をしたのかよく分かっていないのだが。

それらは全部脇に置いといて。

事実は一つだけだ。

「勝った…ん、だよな?」

俺は改めて、仲間達にそう確認した。

過程はどうあれ、結果は変わらない。

決闘の一回戦。ベリクリーデと、アーリヤット皇国の『HOME』所属、バーサーカーとの一戦。

その勝者となったのは…。

「…うん、勝った。ベリクリーデちゃんの…ルーデュニア聖王国の勝ちだよ」

シルナは頷いて、確かにそう言った。

…だよな?

そうなんじゃないかと思ってたところだよ。

夢じゃないんだ。本当に…勝ったんだ。

「…よしっ…!」

俺は思わず、大袈裟なガッツポーズをした。

今ばかりは、素直に喜んで良いだろう。

だって、あの絶望的な状況から、大逆転勝利だぞ?

ドラマかアニメみたいな展開じゃないか。

よくやってくれた、ベリクリーデ。

三回戦勝負で、まず一回戦を先取した。

これは大きな意味がある。

このまま二回戦も勝利すれば、ストレート勝ちじゃないか。

「口ほどにもない奴らめ…」

見たか。聖魔騎士団魔導部隊大隊長の力。

『HOME』のバーサーカーが何だって?

「羽久さん。慢心は良くないですよ、慢心は」

「あ、ごめん…つい…」

心を読んだらしいナジュに釘を刺された。

…お前に「慢心するな」と言われる日が来るとは。

そりゃ喜ぶに決まってるだろう。

一時は、もう負けたと思ったからな。

思わず棄権を勧めてしまったが、最後までベリクリーデを信じて良かった。

「ひとまず、安心したね」

シルナも、少し肩の荷が下りたような、安心したような表情だった。

だな。

とりあえず、ストレート負けは回避したからな。

あれだけ明らかな勝利だったら、審判役がいくらアーリヤット皇国贔屓だとしても、難癖つけられまい。

鮮やかな完全勝利だ。素晴らしい。