この狭い部屋でシャワーを浴びるつもりはない。
 彼を起こしたくないし、ましてやこの一夜を共にした気まずい朝に、どんな会話をしたらいいかなんてわからない。

 私はやり直したかったのだろうか。
 でもやっていける自信はある?
 わからない……。

 流された昨夜と違って、冷静に考えられる今は不安しかない。
 あの人の言う通り、私たちはあまりにも違いすぎたから。 
 
 床に脱ぎ捨てられた服を身につけると、テレビボードに置かれたスマホが振動していることに気づいた。

 鷹也のものだ。

 アラームかと思い取り上げてみると、メッセージアプリの通知が立て続けに入ってきた。

 ポンポンポンと5件。全部同じ『光希』と表示されていた。
 
 「……光希(みつき)さん?」
 
 そういえば昨日も抱き合っている間、何度かスマホの震音を聞いた気がする。