「男性って、甘い物が苦手な方、多いのかしら。父もそうなんですよ。私からしてみれば、人生損をしているような気がしますわ。甘い物が食べられないなんて」
 
 男性? 今、この人、私に向かって男性って言った?
 それとも一般的なお話を私に振っているの?
 一体誰なんだろう……この人。

 状況が全くわからない。これは夢?
 今日はおばあちゃんを送って疲れているから、いつの間にか寝ちゃったのかしら。
 それにしてもリアルな夢……。
 
「……やさん? ……かやさん?」
 
 ん?
 
「鷹也さん? どうされたんですの? 突然ボーッとされて」
「へっ? たかや……?」

 なんで鷹也? さっきも男の人って……。

 そこで私は自分の手元を見た。
 細長いけれど、筋張った指。明らかに男性のものとわかる手が目に入る。

 ……この手、見たことある?

 そしてジャケットの袖口からは、ヘルメスのカフスボタンがのぞいている。
 
「嘘……」