リグレット・レター

研二くんへ

別れてからもう五年になるんですね。時間が経っていくのがあっという間で、正直驚いています。

最近、足が動かなくなりました。これから手の感覚も少しずつなくなっていくと言われました。この手紙を書くことだけが私の唯一の希望みたいなものなのに、神様はあまりにも残酷です。せめて、手の動きくらいは残してくれてもいいのに……。

ネガティブなことを書いてごめんなさい。こんな時、研二くんがいたらどんな言葉をかけてくれるのでしょうか?お笑い芸人のネタをモノマネして笑わせてくれるのでしょうか?それとも、ドライブに連れ出して少しでも気分が紛れるようにしてくれるのでしょうか?

でも、優しい研二くんは「泣きたいだけ泣きな」と言って、抱き締めてくれることだけはすぐにわかります。



研二くんへ

この手紙をあなたが読む頃、私はもうきっとこの世界にはいません。

突然、こんな手紙を書きてしまってごめんなさい。あなたにとって私は、一方的に別れを告げて出て行った最低な元カノでしょう。あなたを守るために、あなたを傷付けたんですから。

本当にごめんなさい。でも、一日たりとも研二くんを忘れたことはありませんでした。何かを食べる時、街を歩く時、眠る時、全てに研二くんと過ごしたワンシーンを思い出して、黙って別れることが本当に正しかったのかわからなくなりました。でも、弱っていく私を見られたくなかった。研二くんの悲しむ顔を、涙を、見たくなかったんです。

ペンを拾ってくれたこと、青葉城跡でデートをした時に上着を貸してくれたこと、七夕祭りでずっと手を繋いでくれたこと、料理を作ったら「ありがとう」と言ってくれたこと、可愛い刺繍をしてくれたこと、こんな私を好きになってくれたこと、出会ってくれたこと、全てが幸せな時間です。本当に、ありがとう。今でも私は、あなたのことが大好きです。

振ったくせに好きだなんて、勝手な女だと呆れてください。でも、これだけは言わせてください。

私は、あなたと出会って初めて「愛してる」という感情を知りました。心から、愛しています。




完結