リグレット・レター

今日は、彼に最後の手紙を書きたいと思っています。代筆、お願いしてもよろしいですか?そして、最後に書いた手紙だけは、彼に渡してほしいんです。



研二くんへ

別れてからもう一ヶ月。あなたとの思い出が詰まった街にいるのが嫌で、東京へ帰ってきました。緑がなくて、空気もどこか重いです。だけど、東京にいるのに研二くんのことばかり考えてしまう自分がいます。

研二くんの好きそうな服屋さんを見つけた時、研二くんの大好物のオムライスをレストランで見た時、研二くんの好きな小説のシリーズが本屋さんに並んでいた時、私はあなたの笑顔を思い出します。

私から振ったくせに、悪役になりきれなくてごめんなさい。



研二くんへ

研二くんと別れてからもう一年。私は身の回りのことが大きく変わりました。研二くんは元気にやっていますか?

一年前のクリスマスは、二人で小さなツリーを買って、お祝いしたことを今でも覚えています。いつもよりちょっと豪華な料理、おいしかった。でも、研二くんが頼んでくれたケーキ、二人で食べるのに六号のサイズが大きすぎました。苦しくなりながら食べたこと、ずっと覚えてます。

研二くん、口周りに生クリームをベッタリつけて子どもみたいでした。でも、そんなところも好きです。



研二くんへ

別れてからもう三年。研二くんはもう新しい恋人はできましたか?結婚して、子どもがいたりしますか?

覚えてますか?二人で海辺をデートした時、教会で結婚式をしていて、花嫁さんが投げたブーケを私が受け取ってしまった時のこと。あの時、研二くんは「永遠の愛を誓います」と言ってくれましたね。まるで、本当の結婚式みたいに。

あの時、そうなってほしいと心の底から思いました。祝福してくれる人がいなくてもいい。ただ、あの教会で研二くんと式を挙げられたら、なんて今でも夢に見てしまいます。馬鹿な元カノでごめんなさい。