このような会話をされていては、資料室に足を踏み入れることができない。誰が胸が大きいかと中学生男子のような会話に、沙月の中から恋心がガラガラと崩れていく。そこに追い打ちをかけるように、好きになった同僚は言う。

「お前らわかってないな〜。胸が一番デカいのは篠原に決まってんだろ!あれはFは余裕であるだろ!」

知らない間に胸をジロジロと見られていたことに、沙月は吐き気を催してしまう。こうして、沙月は同じ会社の人と恋愛は絶対にしないと決めていたのだ。

「よし、こうなったらマッチングアプリに登録しよう!」

ビールを一気に飲み干し、沙月は勢いのままマッチングアプリをいくつかダウンロードし、早速自分のプロフィールを作った。会社以外の人との出会いを見つけるには、こうするしかない。マッチングアプリは本当は既婚なのに、未婚のフリをする人もいるとネットで見たため、結婚相談所にも沙月は迷わず登録した。

こうして、沙月の婚活は始まった。すぐにいい相手と巡り会える、そう期待していた沙月だったが、すぐにその思いは砕かれることになる。

沙月が理想とする相手は、共働きで家事と子育てを分担してくれる相手だった。しかしーーー。