『何か、嫌なことでもあった?』
蓮に見つめられ、雪は全てを見透かされているような気がして、ドキッと心臓が跳ねる。蓮はジッと雪の顔を見た後、自分に顔に人差し指で円を描いた。
『顔、なんだか暗い。何かあったんでしょ?』
蓮が首を傾げながら訊ねる。雪は少し迷ったものの、話すことにした。周りを歩いている人たちに自分が何をされたのか手話ならわからないだろうと思ったことが一番大きい。
『大学の時から付き合っている彼氏に、今日のお昼に振られたの。後輩を妊娠させちゃったから別れようって。連絡もう取れないから、諦めるしかないし、今日はヤケ酒確定かな』
雪がそう言うと、蓮は少し驚いたように目を見開く。刹那、雪の手を掴んで歩き出した。突然のことに雪は当然驚いてしまう。
「ちょっと、蓮くん!?」
口から大きめの声が出てしまうものの、雪の手を引いて歩く蓮にその声は届いていない。雪は、蓮の背中や肩を何度か掴まれていない方の手で叩いたのだが、彼は振り返ることなく歩いていく。
三分ほど歩いてようやく蓮の足が止まる。そこは、雪が普段使っている最寄り駅だった。掴まれていた腕が、ようやく離される。
蓮に見つめられ、雪は全てを見透かされているような気がして、ドキッと心臓が跳ねる。蓮はジッと雪の顔を見た後、自分に顔に人差し指で円を描いた。
『顔、なんだか暗い。何かあったんでしょ?』
蓮が首を傾げながら訊ねる。雪は少し迷ったものの、話すことにした。周りを歩いている人たちに自分が何をされたのか手話ならわからないだろうと思ったことが一番大きい。
『大学の時から付き合っている彼氏に、今日のお昼に振られたの。後輩を妊娠させちゃったから別れようって。連絡もう取れないから、諦めるしかないし、今日はヤケ酒確定かな』
雪がそう言うと、蓮は少し驚いたように目を見開く。刹那、雪の手を掴んで歩き出した。突然のことに雪は当然驚いてしまう。
「ちょっと、蓮くん!?」
口から大きめの声が出てしまうものの、雪の手を引いて歩く蓮にその声は届いていない。雪は、蓮の背中や肩を何度か掴まれていない方の手で叩いたのだが、彼は振り返ることなく歩いていく。
三分ほど歩いてようやく蓮の足が止まる。そこは、雪が普段使っている最寄り駅だった。掴まれていた腕が、ようやく離される。

