けれどその前にかならず萌は「誰も泣かせるようなことをしてないよね?」と、念入りに質問してきた。


そのため大樹は簡単には萌に他の人の命を移すことができなくなっていた。


命を移せばすぐに体調がよくなる。


そのことに萌が気が付かないわけがなかったから。


「なぁ、萌。もう1度だけ力を使わせてほしい」


力を使わなくなった途端、萌の体は見る見るやせ細っていった。


それは見ているのも辛くなる有様で、つい大樹はそんなことを言ってしまった。


ベッドの上で横たわる萌は左右に首をふり「もう誰も傷つけないで。これが私の人生なんだから」と、キッパリと答えた。


そんな日が続いたある日のことだった。


病室を出たところでちょうど萌の母親が着替えを持ってやってきた。