余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。

偶然部屋の前を通りかかった母親が心配した様子でドアを開けて顔をのぞかせた。


今のつぶやきを聞かれてしまったようだ。


「ううん、なんでもないよ」


慌てて言い訳をするけれど、母親をごまかすことはできない。


「学校でなにかあったの? どうして行きたくないの? あんなに学校が好きだったのに」


矢継ぎ早に質問されて「本当に、大丈夫だから」と、途中で言葉を遮った。


大樹に裏切られているかもしれないなんて、とても相談できる内容じゃなかった。


それに、もしなにかの間違いだった時に両親からの信頼を失わせてしまったら可愛そうだ。


「本当に? なにかあったなら無理して行かなくていいのよ?」


その言葉に萌は一瞬胸が苦しくなるのを感じた。


きっと母親からすれば無理をしてほしくないという意味で言ったのだと思う。