余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。

これには萌の思いが綴られているんだから。


柔らかな土を踏みしめて歩いていくと、不意に開けた場所に出る。


そこには小さな神社があった。


それは人に忘れ去られたような朽ち果てた神社で、それなのに周囲の草木だけ丁寧に刈り取られている様子は少し異様に感じられた。


人々は決してこの神社を忘れてはいない。


それでもこれ以上近づくことはできない。


そんな雰囲気を感じさせている。


大樹は木製の鳥居をくぐり抜けて神社の前に立った。


そこでようやく、自分がここへ来たのは自分の意思だということを思い出していた。


そうだ。


俺はここを目指して歩いてきたんだ。


大樹は神社の前で立ち止まり、手を合わせた。


「頼む! 萌を助けたいんだ!」


声に出して祈ると森中に響き渡るようだった。