グイッと腕を掴まれる。


「やめてよ!」


イライラする。


前川さんを“みるく”って呼んだことにも、今彼女が関係ないと思っているバカさ加減にも。


「……落ち着けよ」


「…落ち着いてほしいならあんたがどっか行ってよ。あんた見てるとイライラする」


「…なんなんだよ」


「なにその呆れた口調。ほんとムカつく」


「はぁ…?なんでそこまで言われないといけないわけ。もういい。仕事の邪魔」


パッと手が離れた。


「出口はそこを真っ直ぐ行って右。じゃあな」


私を睨みつけてから去る東雲碧。


そういうところがムカつく。


なんで私が睨まれなきゃいけないわけ。


私、睨まれるようなことした覚えないけど。


あーーームカつく。


【ごめん、先帰る】


実結にそれだけ送って私は建物を出た。


胸のモヤモヤは晴れないままだった。