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 リミは記憶もないような幼い頃、親に捨てられた。

 ずっと施設で育ってきたのだが、10歳のときに天ヶ瀬家当主に引き取られた。歳の割に落ち着きがあるリミを気に入り、当時7歳だった孫の遊び相手に選んだのだ。


 元々人とコミュニケーションを取るのがあまり上手い方ではなく、施設では浮いた存在だったリミ。そんなリミを、充希を始め天ヶ瀬家の人々は受け入れてくれた。



「りみ! 一緒にあそぼ!」



 充希はそう言って、リミのことを屋敷の色々な場所に連れ回した。庭を走り回るときも、勉強をするときも、いたずらをして怒られるときも一緒。リミは自分を慕ってくれる充希が、可愛くて仕方なかった。本当の弟のように思っていた。


 リミは元々高校に行くつもりはなかった。中学卒業と同時に就職先を見つけ、天ヶ瀬家を出て行くつもりでいた。

 だが充希は、そのまま天ヶ瀬家に留まりメイドとして働けばいいと提案してくれた。

 そのおかげでリミは他の同級生と同じように高校生になることもできた。