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「そういえば奥山さん。充希様の女遊びはぴたりと無くなったようですね」



 応接室の掃除中。

 無駄なく手を動かしていた鷹司が、思い出したように言った。


 ……あの日から数週間。彼女の言う通り、充希は以前のように部屋に女性を連れ込むようなことは一切しなくなっていた。女性の方から寄ってきたって全く相手にしないというのだから、少し前の様子からは考えられない。



「無駄な話をしていないで掃除に集中してください」


「おやおや冷たいですね。……あ、いや。貴女なりの照れ隠しなのでしょうか。充希様、不特定多数の女性に手を出さなくなった代わりに──」




 薄笑いを浮かべた鷹司が言い終わるよりも早く、部屋の扉がガチャっと音をたてて開いた。




「リミ! 探したよ」



 学校から帰ってきたばかりで制服のままの充希は、リミの顔を見てぱっと表情を明るくした。

 そしてすぐそこに鷹司がいるにもかかわらず、何のためらいもなくリミを抱きしめた。