静かにうつむいた。すっかり見通されてしまっている気がする。
はっきりとは言葉にしていないが、鷹司は要するに「中学を卒業した頃と今では、充希に抱いている感情の種類が変わっている。だから離れ難くなったのだろう?」と聞きたいのだ。
──その通りだ。
昔は、単なる家族愛みたいなものだった。
だけど今は。充希に想いを告げられた頃から、確かにその気持ちは変化していた。
「あ、奥山さん」
鷹司が何かに気が付いたように声を上げた。
つられて顔を上げると、白手袋をした鷹司の手が、何故かリミの顔に向かって伸びてきていた。
「あの?」
「髪にゴミが。取りますので動かないでください」
「あ、はい。ありがとうございます」
掃除をした後にきちんと身だしなみは確認したはずなのに、いつゴミなんて付いたのだろう。
そう思いながら目を閉じて静かに待っていたが、鷹司の動きは違和感を覚えるほどゆっくりしている。上手く取れないのか、何だか徐々に綺麗な顔が近づいてきているのが気配でわかる。



