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「え……どうして? ステイシアは……」

 いつもと違う状況に違和感を抱き、紙安はアロウマーク家の天井を見上げた。
 視線の先の光の消えた小さなシャンデリアが、朝だということを示すように静止している。

「後は……って」

 なんだか、別れみたいな不吉な言葉に、紙安はあの黒曜石の髪留めを見る。
 そこには、もう何も無い。
 まるで彼女の存在と共に、消えてしまったかのように……。

「嘘でしょ……ステイシア! お願い、反応して!」

 紙安は自分の心に強く強く呼びかけた。
 でも、何も変化は起こらない。誰の声も、何の気配も感じられない。

「私が……失敗したから?」