「清き真珠の加護よ……彼を、黒き怨嗟の戒めより解き放って!」
「……ぐあぁっ!」

 ロゼの指先から一直線に伸びた聖光がリューグの胸に突き刺さる。
 それは彼の胸に絡みついた呪いの鎖を粉々に打ち砕く。
 期待に満ちた光景が確かに目の前に見えた。

 しかしそれは……ただの幻想に過ぎなかった。
 光は確かに数本の鎖を断ち切りはした。
 しかしそこで弾かれ、呪いは自ら意志を持ったように蠢くと大きく広がる。
 その場にリューグは崩れ落ち、紙安の身体も一緒にそれに呑み込まれた。

「う……がぁぁぁっ!」
「リューグさん、ステイシア!」

 ロゼが駆け寄ろうとするも、巨大な呪いの一部に弾かれて吹き飛ぶ。

 呪いの傘が二人を包み、強く脈動する。
 ――その内側で紙安は、リューグの前半生の記憶を、まるで追体験するような生々しさで垣間見た。

 存命中の両親と共に、小さなステイシアをあやしていた優しいリューグ。
 その顔が、恐怖に変わる。