そこではリューグの飾らない姿が見られた。
 アロウマーク邸には大きな庭がある。
 リューグはそこで育つ様々な花々を花瓶に飾るのが好きだった。
 お世辞にもセンスがいいとは言えなかったが、紙安が臥せった時は、彼がよく部屋に飾る花を持ってきてくれたものだ。

 ロゼも心の優しい少女だから、動植物を愛でる姿はよくゲーム内でも描かれていた。

 そんな二人だから、話もよく合うのだろう。
 ロゼが何事かをリューグに呟き、彼はくすりと笑う。

(……いい感じ。こうして見ると、本当に絵になる二人)

 やや強面に見えなくもないが、整った顔立ちをした黒髪のリューグと、可憐で穏やか、人形のような容姿をした白髪のロゼ。
 隣り合えば、お互いの魅力をくっきりと引き立てているように思えた。
 いつしか二人の肩の力は抜け、どちらも自然体になっていた。

(ちょっとだけ、羨ましい気もするけど……これで、いいんだよね)

 ほっとしながらも、胸が小さく痛む。
 それを無視するように紙安はその場を後にし、ロゼが帰る時も理由を付けてリューグに送らせ、自分は部屋の窓から後ろ姿を見送る。