(上手くいったみたい)

 実はこれ、カイラスルートの発端となるステイシアの嫌がらせのひとつで、彼女は差出人の現れない呼び出しでロゼを理由もなく待ちぼうけさせ、怒らせようとしたのだが、それが確かカイラスとの出会いと繋がるのだ。

 ちなみに花束に添えた手紙の文面は、内容を覚えていなかったため白紙だった。しかしそれを見てロゼが行動を起こしたところを見ると、おそらく何らかの力により文章が追記されたか、ロゼには何かが見えたのだろう。

 晶華学園はいくつかの建物に別れており、ロゼは教室棟から外に出ると、教員棟へ伸びる通路の目立たない一角で立ち止まった。紙安は得意の黒曜石の晶還術・影覆いを使って木陰に潜み、その様子を見守る。

(……来た来たっ)

 しばらくすると、そこに背の高い青髪の美男子が歩いてくる。彼こそがフェルメイア王国(しょう)(じゅん)騎士団団長の令息、カイラス・セバスティーンである。

 彼は偶然(というか物語の行きがかり上ではあるのだが)、ロゼの隣に並んだ。おそらく理事長たるリューグの姿を確認し、生徒や職員との会話から何かを探ろうとここに現れたのだろう。その証拠か顔付きからは覚悟と緊張が見て取れる。

 そして誰も他に現れることもなく、勘違いしたロゼが、ついに小さな声で話しかけた。