「――当たり前じゃない」

 顔を強張らせた紙安を、ステイシアは鼻でせせら笑った。

「何のためにこんな事やってると思ってるのよ。ま、そうなったら一つの身体に二つの魂ってややこしい状態になるけどその分、長生き出来るかもしれないし。そしたら三日に一回くらいはあんたの自由にさせてあげてもいいかもね」
「なんですかそれ……」

 つい紙安がくすっと笑ってしまうと。

「変な奴よね、お前」

 悪戯っぽくステイシアが笑って返す。
 年相応の笑顔を見せるその姿は、しかし急にふっと消えた。
 紙安の視界に認識できるものはもう無い。
 目覚めるまでの数秒間、紙安は疲れたような……少しだけ肩の荷が下りたような何とも言えない気持ちでぼんやりとしていた。