下手に一週目の人生でロゼと仲良くしてしまった弊害だ。
 すでに紙安は彼女に友情を抱いている。
 王太子ルキスやカイラス、ミーシャの注目を集めさせるために必要だとしても……この手でその友達を陥れ、悲しい目に遭わせなければならないなんて。

(でも、やらなければ恐らく、今回も前と同じことに……)

 フェルメイア王国は滅び、シナリオはバッドエンドを辿る。

(そうならないために、やらなきゃ……)

 リューグの死を聞いた時の悲しみや、体を裂いた鋼の熱い感触が思い出され、紙安は心を鬼にし行動を開始する――。

 それから紙安は、取り巻きを作ると徹底的にロゼを苛めた。
 悪態を付き、彼女の持ち物を壊し、人の見えないところで攻撃した。
 まるで、これが正常な道筋だと示すように、それはことごとく成功し。そして……。

「――私の目の前で、醜い諍いはやめてもらいたいな」
(来た……!)

 ある日も紙安は、晶華学園にある小さな池にロゼの鞄を沈めていた。