(あれが全部砕けた時、私と彼女は……)

 それを眺めながら、紙安はあの暗い空間でのステイシアとの会話を思い返す……。 



『――お兄様は死に、あたしは何が起きたかもわからず斬り殺された。そんな結末に納得がいかず、あたしは死の間際黒曜石の力を使って特殊な晶還術を使った。お前も付けてたでしょ、あの髪留め……あそこに自分の魂を分割して封じ込めたの』

 どうもステイシアは、前世で今回の紙安と同じ結末を辿ったようだ。
 その際、身に付けていた知識から特殊な晶還術を作り出し、人生の一部をやり直そうとしたらしい。

 だがそれは不完全な術で、負担も大きすぎた。
 数度失敗し、繰り返すたび精神も肉体も衰弱してしまった。
 このままでは目的を果たせないと悟った彼女は一度の機会を投げうち、別の術で死にかけた紙安の魂をこの世界に引き寄せ、自分の代わりに願いを果たさせようとしたのだ。

 紙安には理解し難い話だが、そもそも晶還術などという正体不明の力が存在する世界なのだ。否定するとここにいる自分の存在まで疑わなければならなくなってしまう。

 渋々納得した紙安をステイシアはきつく尖った瞳で睨みつけた。