「ステイ、シア……?」
「呼び捨てにしてんじゃないわよ、まあいいけど。で、お前、名は?」
「…………」
「名乗れってば!」

 恐怖でフリーズしていた頭にようやく少女の言葉が浸透し、紙安は焦点を戻す。

「し、紙安です。矢束紙安……いや、シア・ヤヅカになるのかな」
「シアね。名前が微妙に似てるのがまたムカつくわねー。で、お前、ここがどこかわかってんの?」
「え……?」

 紙安は立ち上がり、周りを見渡した。
 だがそこには何もない……。
 彼女とステイシア以外の周りの空間は、漆黒に塗れている。
 直立できているのが不思議ですらあった。

「な、なんなんですかここ?」
「あたしとお前の精神世界ってところね。そして、お前を呼んだのが、このあたしっ!」
「きゃぁっ!」
 
 ステイシアはささっと紙安と自分との間で指を往復させ――。
 そして突然その手を拳の形に握り、紙安をぶん殴ろうとした。